日本の高級品市場が着実な成長を見せている。

2011年の世界的財政危機、そして東北と福島を襲った東日本大震災は消費にも多大な影響を与え、世界第3位の経済国日本は長年に渡る成長後退とデフレに見舞われた。

しかし、日本の消費は近年回復傾向にあるのだ。

McKinsey & Co(マッキンゼー・アンド・カンパニー)の最新レポートによると、日本の消費者はここ数年毎年3.6兆円を高級品に費やしているという。

ビジネスリーダーたちも楽観的で、マッキンゼー社が調査した高級品関連幹部たちの半数以上が現在日本は成長軌道に乗っており、プラス利益をもたらす力があるとみている。

この変化は安倍晋三首相が行った経済政策、いわゆる『アベノミクス』の効果もあると言っていいだろう。

2013年に発効したこの政策により、賃金上昇→消費増加→インフレというサイクルが生まれ、2017年7月から9月のGDPは1.4%の増加を示した。

失業率が低下し賃金が上昇するにつれて、消費パワーが増大し、日銀は来年2018年のGDPも1.4%のプラス成長を見込んでいる。

ステータスシンボルとしてのブランド買いは減少傾向へ

日本は高級品市場規模でアメリカに次ぐ世界第2位に位置しており、今後3年間で3〜4%の成長が見込まれている。

若者世代は Céline(セリーヌ)、 Balenciaga(バレンシアガ)、Gucci(グッチ)など世界的にも人気が高いブランドを買う傾向があり、一方の年長者世代はHermès(ヘルメス)やChanel(シャネル)のような『確実』で『伝統』をもつブランドを買う傾向が高いと、同レポートの共著者である Benjamin Durand-Servoingtは言う。

しかしながら、日本のミレニアル世代は高級ブランドを所有しているというステータスよりも、ブランドの価格に関係なく、オリジナリティの高いスタイルを作り上げることを優先する傾向があると、Durand-Servoingt氏は注意を喚起している。

デパートvs新商業施設

日本のデパートは2010年から2016年にかけて毎年4%の減収に見舞われるほど苦戦続きだが、それでも高級品購入において主要な場所であることに変わりはない。

同レポートによると、消費者の70%が未だにデパートで高級ブランド品を買うというが、免税店やアウトレット、オンラインストアなど他の選択肢が増加しているのも事実だ。

年長者世代は買い物の大部分をデパートで済ませる傾向が未だにあるが、若者世代は少し様相が異なるとDurand-Servoingt氏は言う。

最近のブランドにとってのホームグラウンドは『ファッションビル』と呼ばれるショッピングセンターで、高級品市場の15%を占め、毎年7%の割合で成長している。

日本の高級ブランド市場のもう一つのトレンドが銀座シックス(東京)や道頓プラザ(大阪)などの『体験型ショッピングセンター』といわれるもの。

「特に若者世代は、どのブランドを買うかよりもどこで買うかを重視している」とDurand-Servoingt氏は言う。

観光業開拓の道

中国人観光客が高級品市場の7~10%を占める日本において、観光業は大事なファクターである。

これには円安と中国における高級ブランドの高値が影響しており、日本で仕入れた商品を本国で売って利益を上げようとする人が増えている。

2020年東京オリンピック開催を考慮すると、観光業には期待していいだろう。

しかし、消費の約3分の1が東京に集中している点にDurand-Servoingt氏は着目し、「われわれは東京・京都以外の都市、例えば横浜などで観光業を伸ばしていく可能性を案として政府に提示した」と述べている。

大阪や周辺関西エリアは近年観光地として人気が出てきており、地元経済を活性化させている点も忘れてはならない。

オンラインの重要性

日本の高級品市場におけるオンラインセールスの普及率は7%にとどまり、中国や韓国といった近隣諸国と比べると遅れをとっている。

日本人買い物客は店舗で直接受けられる真心のこもったおもてなしを重視する傾向があり、スタッフの親切で質の高いサービスを楽しみに店舗を訪れる人がほとんどだ。

それでも「デジタル面は重要だ」とDurand-Servoingt氏は言う。

「どの年齢層をとっても、高級ブランド品を買う前にオンラインで事前チェックする人は多い。日本の消費者は単にオンラインで高級ブランドを買うことに慣れていないだけだろう。各ブランドやデパートなどが適切なオファーを提供し消費者を教育しさえすれば、オンラインでの売り上げも伸びていくと予測できる。」