【21Questions】ALI・LEOが語る波乱万丈の人生観。「すごく大事なことほど、めちゃくちゃ面倒くさい」

ヒップホップ、ロック、スカなどジャンルにとらわれない音楽性で注目を集めている多国籍バンドのALI。『呪術廻戦』や『BEASTARS』などのテーマ曲を次々に担当し、バンドとして波に乗っていた中で当時のメンバーが起こした不祥事により活動休止に見舞われた。
メンバーの再編を経て復活したALIの気迫と覚悟が伝わる、Vo. LEOへの21問のインタビュー。

 

Q1.渋谷で育ったとのことですが、どんな幼少期を過ごしましたか?

それはそれはひどい環境でしたよ。絵に描いたような地獄絵図。ロックンローラーとしては特待生です。ただ、ひどい幼少期だったと思いますけど、楽しかったかな。

ーー具体的にはどんな生活だったのでしょうか。

常に、母親の彼氏や友達が家にたくさんいる状態でした。狭い家の中に10人とかかな、毎日がホームパーティーです。

その人たちにいろんな理不尽なことで怒られたりしていましたけれど、実はアーティストやミュージシャンだったりしていたので彼らが家で流していた音楽には影響を受けましたね。いろんな人種の人が集まって、音楽とか酒とか、いいものも悪いものもたくさんのものが渦巻いていました。それが今のALIの源流につながっていると思います。

 

Q2.初めて買ったCDを覚えていらっしゃいますか?

サッカー日本代表の応援ソングです。「オーレオレオレオレ」みたいな曲のCDでした。保育園のときかな。

Q3.そこから本格的に音楽に興味を持ったのはいつ頃でしたか?

小学生の時には好きな曲がはっきりしていましたね。朝起きるのが苦手だったので、母親にジャネット・ジャクソンやマイケル・ジャクソンの曲を流して起こしてもらっていました。

 

Q4.その当時憧れていた理想の大人像はありますか?

ヒーローに憧れていた気がします。あとはサッカー選手も。

戦隊モノや、ウルトラマン、暴れん坊将軍とか水戸黄門まで、「悪をぶっ飛ばす」っていうのが好きでしたよ。

–確かに今の楽曲を聞いていても、なにか邪悪なものに対するメッセージがあるように思います。

そうですね、変わってないかもしれないです。

Q5.ALIの楽曲はBEASTARSや呪術廻戦など、人気アニメのテーマソングにもなっていますよね。それぞれ作品の世界観を意識して作った部分はありますか?

2作品とも、元々原作が好きだったので、しっかり世界観に向き合って制作できたと思います。テーマ曲の話をいただいたこと自体がもうとにかく感謝でした。

あとはアニメに限らず、メジャーリーグで大活躍している大谷翔平選手が「LOST IN PARADISE」を打席登場曲として使い続けてくれているのも本当に嬉しいですね。こればっかりはお金では買えない名誉です。泣けますね。

Q6.元メンバーの不祥事で昨年からしばらく活動を休止されていましたが、その時期に考えたことはありますか?

1ヶ月ぐらいは都会を離れて伊豆に引きこもっていました。今まで積み重ねてきた音楽がゼロになって、「もうALIって名前で音楽できないかも」って落ち込みましたね。タイアップや関係者の方々にもたくさん迷惑をおかけしました。

でも、事務所の社長をやっている妻(元E-girlsの藤井萩花さん)が、「私がどうにかします」と強く言ってくれたので、僕も周りも本当に勇気づけられました。

さっきお話しした大谷選手の活躍だったり、自分たちがこれまでガムシャラに頑張ってきたのを見ていた周りの方々が手を差し伸べてくださったり、本当に奇跡みたいなことが一つずつ重なってこうして復活できたのだと感じます。

 

Q7.メンバーの大幅な再編もありましたよね。音楽性に変化はありましたか?

不祥事で抜けたメンバーの他にも、気持ちがすれ違ったり違う道を選んだメンバーがいて、今では人数が半分以下になりました。ただその分、今いるメンバーが成長しましたし、いろんな外部のアーティストの方たちとコラボできる幅が広がったんです。たとえば直近だと、ずっと憧れていた東京スカパラダイスオーケストラの皆さんと楽曲でご一緒できたんですよね。

メンバーが3人になったことで、自由にもなりました。軽くなった分、高く飛べるんじゃないかなって思っています。今のALI、すごくいいですよ。

Q8.ALIをまだ知らない人に、最初の1曲としてお勧めするとしたらどの曲を選びますか?

うーん、難しいな。なんだと思う?

(同席していたギターのCÉSARさん)意外とB面の曲の方がALIらしさが詰まってるのかな。例えば僕は、ALIに加入する前『Jungle Love』を聞いてめっちゃ興奮しました。本当に音楽が好きってことが伝わってきて、すごい感動しました。

なるほど。途中加入だからこそ客観的に聞けますもんね。LEOさんはいかがですか?

考えましたけれど、全曲がおすすめですね!どこから聞いてもらっても構わないです、本当に。全部心を入れていますから。

 

 

Q9.これまでに影響を受けたアーティストがたくさんいるとのことですが、若い世代にお勧めしたいアルバムはありますか?

1枚挙げるとすれば、チェット・ベイカーのアルバム、『Chet Baker Sings』ですかね。あんなに優しい歌声とトランペットの音色を奏でるかっこいい男が、めちゃくちゃ不良なんだっていう生き様も含めておすすめしたいです。

彼はドラッグのために音楽をやっている時期があったり、生きている間は本当に色々と大変だった人なんです。でも世界に通用する才能があった。今の世の中にも通じると思うのですが、過ちとか、人と違った部分もあったとしても、何か一つでもポジティブな事を世界にもたらせる才能があるならば、それを使って贖罪を行える環境があってほしいな、と心から思っています。

Q10.今のパートナーとご結婚されてから、自分の中で変わったと思うことはありますか?

もう全部全部全部、ぜーんぶ変わりました!生まれ変わったと言っても過言じゃないくらい。今は二度目の命です。彼女と出会ってなかったら、きっと今頃ひどい人生でした。とっくに檻の中か、のたれ死んでるかどちらかですね。

–ちなみに萩花さんのどんなところに影響されて自分が変わったなと思いますか?

まず、全てにおいてプロフェッショナルなところ。それと、美しいところ。

あとは何より、「しっかり向き合う」ということを愛情を持って教えてくれたのが彼女だと思います。僕は元々、人と向き合うことから逃げがちだったんです。

それでも彼女が僕の首根っこを捕まえて、「本当にやりたい音楽を実現する上で、そんな行動や考えのままでいいのか」としっかり向き合ってくれたんです。そうやって怒ってくれる人って本当に大事なんです。全てにおいて僕が変わるきっかけをくれた人ですね。

Q11.新曲ではR-指定さんとコラボされていますよね。制作過程やレコーディングではどんなやりとりをして出来上がりましたか?

TEENAGE CITY RIOT』は、実は活動休止の前にあるアニメのテーマ曲として制作していた曲でした。どんなラップだったら楽曲にマッチするか考えて、R-指定君しかいない、と。それでダメもとでオファーしたら、「ぜひ」と受けてくれたんです。

5、6時間ブワーってレコーディングして、終わって出てきた彼がすごく嬉しそうにしていたのが印象的でしたね。そのあとバンドが活動休止になってしまって、楽曲もお蔵入りしかけたのですが、R-指定君が「あの曲やっぱり好きだから出せるといいですね」と声をかけてくれたんです。こうして皆さんに聞いてもらうことができて本当に嬉しいです。

–出来上がったラップを聞いてみていかがでしたか?

ラップパートの歌詞は、基本的にR-指定君にお任せしたんです。レコーディングした音源を聞いたら、歌詞に出てくる言葉のチョイスが他のラッパーとは全然違っていましたね。すごく深い言葉もよく知っていますし、なんというか、言葉の鮮度が高いんですよね。言葉とラップに関するオタクなんだなって感銘を受けました。

Q12.新曲の歌詞の中では、「The voodoo is working」という歌詞が繰り返されていますよね。あの「voodoo(=呪い)」は具体的に何を表しているとLEOさんは思いますか?

うーん、やっぱり、それはメンバーが起こした不祥事のことなのかな。

どんな人にも試練とか不条理なこととか、恨まれたりといったことが起こるんです。逆に、それに救いの手を差し伸べてくれる人たちもちゃんといる。「呪い」といっても常にポジティブなことと合わさっているというか、そいつ次第なんだと思うんですよね。呪いと受けとるか、より次のレベルに上がるための運命の階段ととるか。

短期的にみたら「なんで私ってこんなに駄目なんだろう」とか、「なんで俺ってこんなにツイてないんだろう」と思ってしまうことかもしれないけれど、それはただの通過点かもしれませんよね。

あとは、「The voodoo is working」ってブルースのスタンダード曲でも使われるワードなんです。ALIの楽曲は、ブルース、ジャズ、ヒップホップといった音楽史の繋がりでできているんです。音楽史の中で遊びたいというか。だから、60年前の「The voodoo is working」も知ってる人からしたら面白がってもらえるのかな。

Q13.アルバム2曲目の『Whole Lotta Love feat.木村昴』も、レッド・ツェッペリンの有名な同名タイトル曲がありますよね。

そうです、それも言葉遊びです!

 

–声優としてご活躍されている木村昴さんとの共作はいかがでしたか?

いや、嬉しかったな。20歳過ぎの頃に渋谷・円山町で働いたときからの友人なので。

彼のすごいところは、声優として有名になったあともヒップホップや劇団など自分のやりたいことを貫いているところですね。自分の裁量を残しているんです。若い頃からの友人として嬉しく思います。

歌詞もALIに対するメッセージや、いろんなことを込めてくれました。俺としても、ALIの中でかなり好きな曲になりました。

Q14.ご自分の曲は普段よく聞きますか?

制作中は永遠に聞いています。あらゆる時間やシチュエーションで聞いてみるようにしています。

とはいえ締切がある世界なので、諦めたり妥協しないといけなかった部分はどの楽曲にもあります。どのアーティストも、その悔しさがあるから次を作るんですよね。

 

Q15.日本のブランド、WACKO MARIAと結びつきが強いと聞いています。どんな存在ですか?

デザイナーの森敦彦さんは俺の親父みたいな存在です。日本屈指のレコードコレクターとしても有名で、若い頃から本当にお世話になっています。

森さんも妻と一緒で、俺に怒ってくれる数少ない人なんです。家族ですね、本当に。彼がいなかったらALIは生まれていないと思います。

Q16.若い世代に対して、音楽を通して伝えたいことはありますか?

超クソな出来事も多いけど、世界はちょっと美しいかもとか、自分以外の人を応援するってすごいことなんだな、とかですね。音楽は形が見えないけれど、だからこそいろんなところに混ざりやすいですよね。だからすごい美しいなって思います。

Q17.逆に音楽では伝えられない人生の極意とはなんでしょうか。

いっぱいありますよ。実体験から語ると、俺もこの2年くらいの間に全てが根こそぎ持ってかれるようなしんどい出来事がたくさんありました。でも起きてるときも寝てるときも、叶えたい夢だけを考えてやり通せれば、絶対叶います。

あと大切なのは、「すごく大事なことほど、めちゃくちゃ面倒くさい」ということ。本当にこれは真実。めっちゃくちゃ真実です。

生きていく上でも、健康を保つとか、常に清潔でいるとかってすごく面倒くさいじゃないですか。音楽でも、スタジオの作業とかアレンジとかって、本当に0.1%しか変わらないような面倒なこともあるんですよ。すごく大事だけど、だからこそすごく面倒くさいんです。

でも、この前ドキュメンタリー見たら、スタジオジブリの宮崎駿監督も「面倒くさい、面倒くさい」って言いながらいろんなことやってたんですよ。
あれでいいんですよね。面倒なことは面倒って思っていい。その上できちんとやっていくっていうのが大事なことだと思います。

 

 

Q18.普段服を選ぶときのポリシーはありますか?

スーツ以外ほぼ着ないんですよ。ジャケットとパンツのセットアップを選んで、あとはシャツ、ネクタイを決めるだけ。服は性格とか姿勢を変えてくれるからいいですね。

Q19.どんなジャンルでも結構です。これだけは譲れないこだわりはありますか?

音楽以外は全然こだわりないんです。

あ、でも一つだけあります。納豆を食べた箸は1回洗いたい!普段は全然潔癖じゃないし、美味いものもジャンクなものも大好きなんですけれど、そこだけは譲れないかもしれない。

Q20.LEOさんが変わりたくない部分や、変わらない軸はなんですか?

ずっと音楽を好きでいること、仕事や日常に感謝できて楽しく過ごせること、あと健康でいること。その三つだけでいいです、本当に。

Q21.最後に、これからの展望を教えてください。

僕個人としても、ALIとしても夢は同じです。世界中でいろんな人たちと音楽を作って、求めてくれる人に届けていくこと。その究極の象徴がグラミー賞を獲るってことだと思います。

世の中には大変なことも多いけど、そういったものに対して音楽を武器に、ポジティブなエネルギーで勝負していきたいですね。100%の力で駆け抜けていきたいと思います。

 

Photographer:Maruyama Momoko
Interview & Text:Tajima Ryoko

【ALI】

-ALIEN LIBERTY INTERNATIONAL-
Vo.でリーダーのLEOを中心にした全員ハーフの多国籍バンド。東京/渋谷発。
FUNK、SOUL、JAZZ、LATINなどのルーツミュージックをベースにHIPHOP、ROCK、SKAなどをミックスしたクロスオーバーな音楽性で注目を集めている。
・Instagram(https://www.instagram.com/ali.love.music.and.dance/)