デジタル化が進み、出版業界の厳しい生き残り競争が繰り広げられている。
特にトレンドを追うファション誌は、販売部数が年々減ってきている。
ザ・ニューヨーカー(The New Yorker)や、ヴォーグ(Vogue)、ティーン・ヴォーグ(Teen Vogue)などを出版するCondé Nast Publications(多国籍雑誌出版企業)が2017年、従業員3,000人の2.5%にあたる80人の人員を削減すると発表した。
『Teen Vogue(ティーン・ヴォーグ)』に関しては紙版廃止、今後はデジタル版を成長させていくという。
そんな中ティーン・ヴォーグは、デジタル版のウェブページに『News and Politics(ニュースと政治)』というタグを設け、若い読者数を増やしている。

ティーン・ヴォーグのウェブサイトのトップページがこんなメッセージが書かれている。
「Don’t just sit there: Now is the time to RESIST Donald Trump’s America.」
(ただそこに座ってないで、今こそトランプ政権に反対しよう
<29歳の黒人女性編集長が変えた、ファション誌の常識>
ティーン・ヴォーグは、ヴォーグの編集長アナ・ウィンターが2003年にTeen(10代向け)に考案した。
2017年3月から、初の黒人女性編集長エレーヌ・ウェルタロスが史上最年少の29歳で就任。
Condé Nast Publications(ヴォーグなどの多国籍雑誌出版企業)の歴史の中で、2人目となる黒人編集長だ。
彼女は2012年からティーン・ヴォーグでBeaty& Healthディレクターとして働き、2016年にはエディターとして政治的な記事や特集をして、ティーン・ヴォーグの読者を増やしたと注目を集めている。
今まで多くのファッション誌は、出来るだけ政治に触れないという暗黙のルールが存在した。
しかし2016年のアメリカ大統領選挙で、トランプ氏が勝利したことで、ティーン・ヴォーグの読者は増えていった。
ティーン・ヴォーグで一番アクセス数が多かった記事が、トランプを批判した記事だった。
タイトルは、『Donald Trump is Gaslighting America』(トランプ氏は、間違った情報を信じさせ、アメリカを狂わそうとしている。)と言うものだった。

以前は300万人程のヴィジター数が、2016年のこの記事で約940万人に達し、今も新規ヴィジター数を伸ばしている。
エレーヌは、あるインタビューで以下の様に語っている。
「今までのファション誌の表紙は、”リッチでカワイイ白人のモデル”ばかりだった。
私はデジタル時代に育ってきて、今世界のティーンが何に興味があって、何に飽きたかをよく分かっている。
女性が社会で活躍して男女平等の時代。
私たちは、ただオシャレをしてカワイイだけじゃ物足りない。
政治、世界のニュース、性別/人種差別、そして女性の権利だってすごく関心がある。」

<美貌と教養のある女性への憧れ>
最近では起業したり管理職に就く女性が増えてきて、ティーンでも、ユーチューバーやブロガーとして儲けている人も多く、働き方が様々だ。
一生結婚しない道や、将来離婚する可能性も十分にある。
人生を人に頼ることなく、どうやってスマートに生きていくかと言う事が、今まで以上に必要となっている。
デジタル世代に生きる私たちは、もちろんオシャレやトレンドも大好きだが、ネット上にありふれた情報の中で、どの情報が真実でどの情報が嘘なのかを、見極める事が大切。
ネット上だけでなく、政治家や企業、そしてセレブの発言までも同様に、都合の良いモノをすべて信じてはいけない事を学ぶ必要があり、その必要性をファション誌に取り入れたのが、ティーン・ヴォーグなのだ。
その上デジタル世代は、世界のニュースがすぐに手に入るからこそ、世界情勢や政治がどのように経済に関わり、世界と自分の国を比較する事も容易となった。

<ティーン向けのイベント>
エレーヌ・ウェルタロスは、読者とより距離を縮めるため、ティーン向けのイベントを開催している。
人気ブロガーや自分の趣味で成功したティーンをゲストに迎えトークショーを行ったり、ファッション・ブランドとコラボして、ティーンの素晴らしいアイデアに奨学金を贈るなど、今後ティーンがよりスマートに人生を送れる支援をしている。
彼女の編集長としての活躍を、アナ・ウィンターは以下の様に称賛している。
“Elaine is incredibly in tune with the Teen Vogue audience and has used that unique insight to engage and connect with her readers on a very personal level. Over the last year, she has demonstrated a fearless leadership in her pursuit to make Teen Vogue the voice of a new generation, and we look forward to all she will accomplish in her expanded role as Teen Vogue’s new editor in chief.”
エレーヌは、驚くほどにティーン・ヴォーグの読者とうまが合って、彼女のユニークな洞察力は、読者の個人レベルまで繋がっている。
編集長として、1年を通してティーン・ヴォーグを新しい世代の’声’にするために、大胆なリーダーシップを発揮してくれた。
今後の彼女の活躍を、とても楽しみにしている。