Calvin Klein(カルバン・クライン)の高級ライン「205W39NYC」が、フランス・パリに新店舗をオープンさせることがわかった。

カルバン・クラインの新店舗は、同社のチーフ・クリエイティブ・オフィサーRaf Simons(ラフ・シモンズ)と、米国を拠点に活動するコンテンポラリー・アーティストのSterling Ruby(スターリング・ルビー)の二人がデザインを手掛けている。

店舗は二階構造となっており、正面中央の広々とした空間は吹き抜けに。その天井部からはカラフルなポンポンやメタリックなバケツなどが釣り下がっており、スターリング・ルビー氏とのコラボレーションを強く窺わせる力強くも美しい現代アートに彩られている。

https://vmagazine.com/slideshow/107037/calvin-klein-paris-flagship#slide1

また新店舗が入る建物は1880年に建築されたものといい、シンプルでありながらも美しいカルバン・クラインの美学に沿ったものと言えそうだ。

ラフ・シモンズの生い立ちとは

今回店舗のデザインを手掛けることとなったラフ・シモンズはベルギー出身のデザイナーとして知られる。

https://hypebeast.com/2017/7/raf-simons-runway-show-retrospective

2015年までDior(ディオール)でクリエイティブ・ディレクターを務めていたラフ・シモンズは、ディオールを退職した後にカルバン・クラインへ。

昨年秋にシェフ・クリエイティブ・オフィサーとして就任して以来、初のコレクションを発表するやいなや、CFDAファッションアワードのデザイナー・オブ・ザ・イヤー賞をウィメンズウェア部門、メンズウェア部門の双方においてダブル受賞するという大きな成功を収めている。

さらにこのコレクションでラフ・シモンズは、ブリティッシュ・ファッション・アワードにおいてもデザイナー・オブ・ザ・イヤーを受賞している。

独学でデザイナーとしての才能を開花させる

しかし彼の魅力はデザイナーとしての能力の高さだけではない。

ベルギーで生まれ育ったラフ・シモンズは、大学では服飾ではなく工業デザインを学び、卒業後もインテリアデザイナーの道へと進んだ。

ところが、次第にファッションに関心を持つようになった彼は、独学で服をデザインするようになった。

さらに、アントワープ王立美術アカデミーのファッション学科へ自前の服をと持ち込み入学させてくれないか交渉した際に、その洗練されたデザインを目にした大学側は、ラフ・シモンズに対しあえて大学で学ぶ必要がないことを伝えたという。

その後、本格的にファッションの道へと歩み始めたラフ・シモンズは、1995年自身の名を冠したブランドRAF SIMONS(ラフ・シモンズ)を立ち上げ、世間に名をとどろかせることとなった。

自ら立ち上げたブランド、RAF・SIMONSのラインナップにおいて彼が見せるのは、一見すると斬新で個性的な服の数々。メンズウェアを中心に展開する同ブランドのラインナップは、若者向けでありながらどこか懐かしさをも感じさせる雰囲気に溢れており、独学でファッションの道を切り開いたラフ・シモンズの懐の広さを感じさせる。

カルバン・クラインでも独創性を発揮

RAF・SIMONSのスタイルと、ボディラインを強調させつつもシンプルなスタイルを貫くカルバン・クラインのスタイルは一線を画しているかのように思える。

しかし、先月ニューヨークで開催されたカルバン・クラインの2018年秋コレクションのランウェイでは、ラフ・シモンズは「Landscapes(ランドスケープ)」と題し、同氏が捉えるアメリカの姿を投影してみせた。

ランウェイ上にはなんと5万ガロンにも及ぶ大量のポップコーンを敷き詰めるなど、ラフ・シモンズ氏ならではの想像力をいかんなく発揮させていた。

https://www.nytimes.com/2018/02/14/fashion/calvin-klein-raf-simons-coach.html

さらにラフ・シモンズをチーフ・クリエイティブ・オフィサーとして迎えてから初となった昨年秋のコレクションにおいて、カルバン・クラインは胴体部分にシースルー素材を採用したセーターを販売。あまりに斬新過ぎるとして注目を集めた。

ラフ・シモンズの類まれなる独創性はカルバン・クラインにおいても埋もれてしまうことはなかったのだ。

もう一人のデザイナー、スターリング・ルビーとは

一方、パリのカルバン・クライン新店舗のデザインを手掛けたもう一人の人物、スターリング・ルビーも注目に値する人物だ。

コンテンポラリー・アーティストとして米国を拠点に活動してきたスターリング・ルビーは、メタルやスプレーアートなど、様々なマテリアルを通じて作品を構築。

幼少期にパンクミュージックやロックミュージックなどが流行期を迎えていたという彼はそんな音楽からの影響をも明かしており、鬱屈したエネルギーをぶつけているかのようなダイナミックでパワフルな世界観を表現している。

ラフ・シモンズはスターリング・ルビーのファン

スターリング・ルビーにはファッション界においてもファンが多く、ラフ・シモンズもその中の一人だ。

彼はスターリング・ルビーの作品を個人的に購入したこともあるほどで、RAF・SIMONSのコレクションでは既にスターリング・ルビーとのコラボレーションを果たしている。

http://fashionpost.jp/fashion/fashion-news-event/27023

両者のコラボレーションが見せたのは、ラフ・シモンズらしい独創性と、スターリング・ルビーのエネルギーが洋服をキャンバスにぶつかり合う姿だった。

そして今回、ラフ・シモンズは、自身の同名ブランドRAF・SIMONSとではなく、カルバン・クラインとしてスターリング・ルビーとコラボレーションを見せることとなったのだ。

コラボレーションしたパリの新店舗は、「自分の手掛けたデザインは、ブランドの未来を祝うためのマーカーとして見られるものだ。店舗の内側から輝きを放ち、カルバン・クラインの新たなる日を象徴してほしい」とスターリング・ルビーは、コメントしている。

欧州初の205W39NYCフラッグショップの意味するものは

一方、今回新オープンすることとなる新店舗のような形態のフラッグショップは、カルバン・クラインの『205W39NYC』ラインにおいては欧州で初のものとなる。

エッフェル塔やオルセー美術館からもほど近いパリの7区に位置するということからも、欧州で同ラインを普及させる足掛かりとしたいブランドの意向が伺える。

そんな『205W39NYC』ラインにとっての突破口となるかもしれない新店舗においてラフ・シモンズとスターリング・ルビーの両者が共演を果たしたのはラフ・シモンズ下の新生カルバン・クラインにとって象徴的な事象となるかもしれない。

今後二人が同ブランドにおいて、どのような共演をみせてくれるのか、期待がかかる。