世界各国に店舗を展開させるティーンズ向けアクセサリーショップ、Claire’s(クレアーズ)には中高時代やハロウィンの際にお世話になったという方も多いのではないだろうか。1960年に米国で誕生したクレアーズは、世界各国に3000店舗を展開。日本でも160店舗を展開させており、同社は今やカジュアルアクセサリーチェーンとしては世界最大級の規模となっている。クレアーズは、ティーンズ世代の若い女性をメインターゲットとして据えられているが、安価で豊富なバリエーションが揃うとして大人世代にも根強い支持者を有していた。近年では、新たな購買者層獲得のため、米国各地でスーパーマーケットを展開するGiant Eagle Supermarket(ジャイアント・イーグル・スーパーマーケット)や同じく米国内に展開するドラッグストアCVSとも提携し、店舗を拡大させる傾向にあった。

そんなクレアーズが、20億ドル(2127億円以上)もの債務を抱え、米国本社が破産手続きを開始させているとして波紋を広げている。ティーンズ世代から熱い支持を集めてきたクレアーズが、なぜここまで巨額の負債を抱えることになってしまったのだろうか

2007年には始まっていた破産への序章

クレアーズが破産へと向かうこととなる布石は、実は2007年に打たれていた。この年、同社は大手プライベート・エクイティ・ファンドのApollo Global Management LLC(アポロ・グローバル・マネジメントLLC)により買収されている。米国では近年モールをはじめとする実店舗へと足を運ぶ若者が減少傾向にある中、2010年から2013年までの間にかけ、アポロ・グローバル・マネジメントLLCは米国全土のモールにクレアーズの新店舗を350もオープン。ジャイアント・イーグル・スーパーマーケットやCVSとの提携によりスーパーマーケットやドラッグストアといったモール以外の場所において店舗を展開させるという戦略も含め、過度な出店戦略を多額の債務を抱えながら進めてきた。その戦略が、自らの首を絞めることとなりクレアーズは売り上げの伸び悩みが続いてきていたという。

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オンラインでの販売を行ってこなかったのが仇に

実店舗へと足を運ぶ若者が減少傾向にある中、その代わりに台頭してきたのがオンラインショップの存在を軽視してきたことも今回の破産の要因でもある。米国では、ファストファッションブランドも以前にも増して人気を集めてきており、H&MやForever 21 (フォーエバー21)、そしてZara(ザラ)では、近年クレアーズが得意とするアクセサリー分野での売り上げも非常に伸びてきていた。そんな波を受け、クレアーズは同社の傘下でクレアーズ世代よりも少々上の10代後半から20代の女性をターゲットとするアクセサリーブランドICING(アイシング)においては近年オンラインショップを開設。しかし本流のクレアーズはそんな流れに頑ななまでに逆らい続けてきた。クレアーズでは日本支社のホームページを閲覧してみてもわかるよう、オンラインでの商品販売をこれまで行ってきていない。

それどころか以前にも増して実店舗を幅広い場所において展開させることに力を注いできた。しかしどんなに魅力的な商品を取り揃えていたとしても、それを販売している場所に消費者が足を運ばないのでは元も子もない。そんなジレンマに陥ったクレアーズは、2016年にも経費削減のため米国内の150以上もの店舗を閉鎖。それでも破産を回避することはできなかった。

一方、このような消費者行動の変化はクレアーズのみならず、モールを中心に店舗を展開させてきた企業全体に大きな打撃をもたらしている。米国ではおもちゃとベビー用品の専門店として知られるToys“R”Us(トイザらス)も、昨年9月に破産手続きを開始今年の頭には全米で800もの店舗を展開させていたものの、今後180店舗を閉店させることを発表している。またトイザらスも2005年に買収を受けており、そういった意味においてもクレアーズと同じ道を辿ってきたといえる。

米国の店舗には既に閉店されたものも

他方で米国本社での破産手続きがどのような影響をもたらすことになるのかということは、日本を含む世界各国におけるクレアーズ支社が懸念するところだ。米国では破産のニュースが伝えられて以降、既に一部のクレアーズ店舗が閉店を迎えている。また店長はじめとする店舗の従業員が本社から閉店の理由として受けた説明は、四半期の売上が目標額を下回ったため、などのものであったという。今後米国内のクレアーズは閉店が相次ぐことになるであろうことが予想される。

日本と米国では大きな違いがみられるクレアーズを取り巻く状況

この影響が日本の店舗にも及ぶことになるとすれば、これまでクレアーズのアクセサリーを愛用してきたという若い世代にも大きな衝撃が走ることは確実だろう。

しかし、米国と日本では消費者動向にも大きな違いがある。米国でクレアーズが店舗を展開してきたモールにおいて、同社がターゲットとしてきた若い世代の客足が伸び悩んでいたことは先に記述したとおりであるが、日本において売り上げが大きいクレアーズ店舗はショッピングセンターやモールに位置するものではなく路面型だという

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それだけではない。

クレアーズの日本支社では、近年LINE(ライン)での情報発信を強化。クレアーズがターゲットとする中高生世代の利用者が圧倒的に多いメディアを駆使し、セールや一押しのアクセサリーなどの情報発信を行うことで、客足の確保に成功してきたとのことだ。ちなみに同社のラインでの“友達”数は月に500人程度増加することもあったといい、一定以上の効果が得られているのは間違いなさそうだ。

クレアーズの破産手続きがマスコミにより伝えられてから一週間以上の時が流れても、いまだに口を噤んだままの同社経営陣ら。

今後米国のクレアーズが再生に向けてどのような道を歩んでいくのかはまだわからないが、一刻も早く負債を解消して体制を整え、心機一転した姿が見られる日が訪れることを待ち望むばかりだ。