若手クリエイターの登竜門として知られる「第33回イエール国際モード&写真フェスティバル」が4月26日〜30日まで開催される。

さらに、本年度のファッション部門コンペティションのファイナリスト10人が発表された。

「イエール国際モード&写真フェスティバル」は毎年4月下旬に南仏イエールで開かれているこのフェスティバル。

33回目を迎えるフェスティバルのメインイベントのファッション部門コンペティションは、過去にアンソニー・ヴァカレロ(Anthony Vacarello)、アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQeen)やパコ・ラバンヌ(Paco Rabanne)のクリエーティブディレクター、ジュリアン・ドセナ(Julien Dossena)が受賞した。

現在は、ファッション部門のほか、写真部門と昨年からスタートしたファッションアクセサリー部門のコンペティションがあり、さらに若い才能への扉を広げている。

著名なデザイナーが審査委員長を務めることでも有名で、過去には山本耀司、ラフ・シモンズ(Raf Simons)、ドリス・ヴァン・ノッテン(Dries Van Noten)リカルド・ティッシ(Riccardo Tisci)などが名を連ね、今年はハイダー・アッカーマン(Haider Ackermann)が務める。

60か国以上から約300のエントリーがあったというファッション部門のファイナリストには、1月に行われた最終選考で、ヨーロッパ勢を中心とした10人が選ばれた。

最終審査は南仏イエールで開かれるフェスティバルで行われ、コンペティションでは多くの企業が、彼らのような若く才能あるデザイナーを支援し、シャネル(CHANEL)、LVMH、プルミエール・ヴィジョン(PREMIÈRE VISION)、クロエ(Chloe)などが協賛するグランプリと各賞が決定する。

ファイナリスト10人の顔ぶれはこちら。

 マリー・イヴ・ルカヴァリエ(Marie-Ève Lecavalier)

カナダ出身のマリー・イヴ・ルカヴァリエは、スウェーデンのジュネーヴ造形芸術大学の卒業生。

彼女の作品は、リサイクルジーンズとビンテージの革を切ったり、縫い合わせて、新しいピースへと変換させる手法を用いている。

制作についての研究を重ねている間に、彼女は革を編み込むテクニックを身につけ、複雑に絡み合った全く新しいパターンを生み出した。

エスター・マナ(Ester Manas)

ブリュッセルの美術学校ラ・カンブル(La Cambre)を卒業した、フランス人デザイナーのエスター・マナは“Big Again”というタイトルで、全ての体型、全ての人種、全ての女性に向けたコレクションを出した。

体のカーブやラインを強調するデザインの作品で、“肉体のパワー”を表現する試みで、サイズは34〜50と幅広く展開する予定。

特徴は、体の自由な動きを許容する伸縮性の高いジャージー素材。

バレンシアガ(Balenciaga)やアクネ・ストゥディオズ(Acne Studios)のスタジオでのインターン経験を生かして、エスターは視覚的かつ審美的な基準を掲げ生き生きとしたファッションを提案する。

リンダ・コッコネーン(Linda Kokkonen)

フィンランドの候補者はここ数年来、「イエール国際モード&写真フェスティバル」の常連だ。

ヘルシンキのファッションスクールであるアアルト大学(Aalto University)のトレーニングが成功したことが裏付けられている、良い結果だろう。

同大学の卒業生であるフィンランドのデザイナー、リンダ・コッコネーンも例外ではない。

彼女はビクトリア時代のドレスとバイカーの装いを融合させた作品を発表した。

七色のレッドやブラックのシルエットは、レースで縁取られたジャケットと擦り切れたニット、レザーのズボンとコルセットの刺繍、シルクのドレスは浮き上がった糸で仕上げられている。

環境の保護について懸念し、ビンテージとリサイクル素材を多用している点も、北欧のデザイナーならでは。

ジェフ・モンツ(Jef Montes)

オランダ出身のジェフ・モンツは、アーネムにあるアート・デザイン芸術アカデミーのArtEZを卒業した。

ティルブルグにある繊維博物館と共同で独自のファブリックの開発も行っている。

サメを狩るためにスペイン南部を航海した祖父に敬意を表して、 “Tormenta(嵐)”と題した彼のコレクションは、海の世界に触発されたという。

特に、ナイロン、真鍮、カーボン、ファイバーグラスをベースにしたテクニカルファブリックに注目だ。

デザイナーは、嵐の中で遭遇した船のように、体の周りに渦巻きのように浮き彫りになっている気まぐれなシルエットをデザインした。

エラ・フィダルゴ(Ela Fidalgo)

過去にコンペティションにはあまり出場していないが、スペイン、マドリードのIEDを卒業生であるエラ・フィダルゴ。

彼女の“Earthworth”コレクションでは、循環経済の一環として、素材の再利用を軸とした創造の限界を探求した。

自然に近いアフリカと南アメリカの部族へのオマージュとして、家族の価値観に結び付きや、“共有”することの感覚、そして“コミュニティ”の感覚を作品を通じて伝えたいと思っていると語った。

ボリューム感とカラフルなシルエットは、多様でリサイクルされた素材を集めて作られ、創造的な活力である自然の豊かな土地を表しているようだ。 

アントニア・セダコヴァ(Antonia Sedakova)

ロシア出身のアントニア・セダコヴァは、アアルト大学を卒業した。

彼はロシアの80年代の社会をテーマに、コレクションを展開する。

ソビエトの制服とそのシンボルを用いて、ソ連時代に禁止されたアンダーグラウンドのミュージクシーンからインスパイアされ、イエローとカーキのプリントが要となる。

ロシアの80年代のロックシーンの象徴的な歌手である、ヴィクトル・ツォイ(Viktor Tsoi)へのオマージュでもあると語った。

サラ・ブリラント(Sarah Bruylant)

アムステルダムのファッションスクールを卒業したベルギー出身のデザイナーサラ・ブリラントは、ファッション業界の難しさについてのスピーチを聞いて、ファッションが大好きであるという思い表現するために、ユートピアの世界を創造することに決めたという。

それは、急進的なスタイルで大胆な服を着る世界だと説明した。

デザイナーは気まぐれなシルエット、豪華なスタイル -、風船のように広がるスカートなどを作り、彼女の想像力豊かな内面が表現されている。

ロシュミー・ボッター(Roshemy Botter)

オランダ出身のロシュミー・ボッターは、アントワープ王立芸術学院でハイダー・アッカーマンが陪審員を務めた年に卒業した。

デザイナーは、特に環境と海洋の保護に尽力した“魚の戦い”というコレクションを発表した。

家族が暮らすキュラソー島の汚染の荒廃を知った彼は、ビニール袋や漁網のしわ寄せ、シェルなどをデザインに取り込んだ。

コレクションでは、地元のデザイン会社や仕立て屋などのテクニックも取り入れて、オマージュの意味も込めているそう。

アナ・イソニエミ(Anna Isoniemi)

彼女もまた、アアルト大学の卒業生。

フィンランドのデザイナー、アナ・イソニエミは1960年代のカーレースと未来主義からインスピレーションを得て、女性らしさと男性“性”を取り入れたコレクションを制作した。

レーシングカーのドライバーのユニフォームに触発されたシルエットは、頭からつま先まで輝いている。

メタリックシャード、メッシュコート仕上げ、スパンコールはデザイナーにとって“女性のための鎧”だと語り、力強さを演出する。

レジーナ・ウェバー(Regina Weber)

レジーナ・ウェバーはドイツ人だが、メゾン・マルタン・マルジェラ(Maison Martin Margiela)のスタジオで働いた経験もあり、フランス語を完璧に話す。

ドイツのベルリン・ヴァイセンゼー芸術大学(Weißensee Academy of Art de Berlin)の卒業コレクションでは、ファッションジュリー大賞を受賞した。

彼女は本物の花を使ったコレクション制作を検討していたが結果的には、ドイツの化学会社と協力して、花をシリコーンに閉じ込めてコートにまとめる技術を開発した。

淡いカラートーンと柔らかい雰囲気で、詩的なコレクションを制作した。