2010年に多くの人に惜しまれ亡くなったイギリスのファッションデザイナー、Alexander McQUEEN(アレキサンダー・マックイーン)の半生を描いたドキュメンタリー映画「 McQUEEN(マックイーン)」 が6月8日、同デザイナーの出身地であるイギリスにて全米に先駆け、先行上映が開始した。(日本未公開予定)

アレキサンダー・マックイーンのデザイナー人生

ロンドンの下町と呼ばれるようなルイシャム地区の6人兄弟の末っ子として生まれたアレキサンダー・マックイーンは、タクシー運転手の父を持ち、決して裕福では無い家庭環境で育った。

16歳で学校を退学し、紳士服オーダーメイドの名門であるサヴィル・ロウにてアシスタントを積んだ後、更にファッションの名門校であるセントラル・セント・マーチンズを卒業。

デザイナーとしてデビューしたきっかけは、セントラル・セント・マーチンズの卒業コレクション。

当時、British Vogue(ブリティッシュ ヴォーグ)のエディターでもあり、スタイリストとして活躍していたIsabella Blow(イザベラ・ブロウ)の目に留まり、無名だったのにも関わらず、彼のコレクションを5千ポンドで全て買い取ったというエピソードはとても有名である。

後にもイザベルは時に友人、ミューズとして少なからずとも彼のデザイナー人生に影響を与えた。

デビュー後は、ロンドンコレクションへの参加を始め、サヴィル・ロウで学んだテーラードの手法を生かしながらも型にはまらない前衛的なデザインを発表し続け、常に注目を集めた。
ビョーク、レディ・ガガ、リアーナ、ケイト・モスといった世界のセレブリティ達にも支持され、イギリスの名誉あるデザイナーを称えるブリティッシュ・デザイナー・オブ・ザ・イヤーを4度に渡り、受賞した。

愛され続ける天才デザイナー

2010年、当時40歳で突然の他界が発表され、ファッション界を始めとする世界中の人々が悲しみ、彼の早すぎる死を惜しんだ。

その後、2015年にはニューヨークのメトロポリタン美術館、ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)にて、回顧展である「AlexanderMcQueen: Savage Beauty(アレキサンダー・マックイーン:サヴェージビューティ)」が開催。

中でも、同デザイナーの出身地であるロンドンでは、多くのファンが殺到、予約チケットが即完売した事を受け、当初予定していた会期を延長し、結果、計8万人を超える来場者が同展示を訪れた。

これは、同博物館の当時の予約券販売数の最高記録を更新し、いかにイギリスが誇る革命的デザイナーとして、今でも多くの人々に愛され続けているかを再確認、証明するきっかけとなった。

ドキュメンタリー映画「マックイーン」

幼少期から突然の死までのドラマティックなデ半生を描くドキュメンタリー映画として制作された同作品は、2018年4月、ニューヨークで開催されたトライベッカ映画祭にて世界限定公開が発表。

監督は、Ian Bonhôte (イアン・ボンホート)の他、脚本と共にもう一人の監督として Peter Ettedgui (ピーター・エッテッジュイ)が手がけている。

イギリスのやんちゃな不良少年が、当時チャールズ皇太子の洋服も手がけていたサヴィル・ロウの有名テーラーで修行、自身のブランド発表に続き、後にはパリのクチュールにてジバンシィのクリエィテブ・ディレクターを務めるようになる。

前衛的なスタイルで革命的なデザインは、時に物議を醸し出しながらも、時代の異端児として人々に愛され続けた。

そんな衝撃的で稲妻のような半生を描いた同作品は、家族、友人や仲間などの独占インタビューを交え、リアルに描かれている他、当時革命的な手法で周囲を驚かせた、回転式のスプレーペイントで洋服を色付けていくという最も有名なインスタレーションもアーカイブとして登場している。

映画の公開に先駆け、公開されたトレーラーでは、次のような印象的なメッセージから始まっている。

“No one discovered Alexander McQueen, McQueen discovered himself.”
「アレキサンダー・マックイーンは誰かに発掘されたのでは無い、彼は自分で自分を発掘したのだ」(映画オフィシャルサイトbleeckerstreetmediaより)

死後も尚、注目を集め続けるイギリスが産んだ天才デザイナー、アレキサンダー・マックイーン。

デザイナーとしての華々しい活躍の裏で、幼い頃から反骨心に満ち、苦悩と闘い続けた彼の半生は、ファッションというフィルターを通さなくても、興味深いものがある。

また、彼を取り巻いた家族、友人、仲間によって彼は支えられ、今も心に生き続けていると、改めて人々に知らされるきっかけとなったのでは無いだろうか。

同作品は残念ながら、日本での公開は未定となっているが、この夏イギリス、アメリカにて限定公開される予定だ。