先日、ファーストリテイリング傘下のUNIQLO(ユニクロ)が2020年までにアンゴラヤギの毛である「モヘア」の使用を中止することを発表した。
以前から動物愛護や環境保全の観点からラグジュアリーブランドを筆頭に高まっていた、リアルファーを使用しない”FUR FREE”(ファーフリー)の考えが世界に浸透してきている。、H&Mグループも2020年までのモヘア使用中止を表明した。
2005年の時にすでにファーフリー宣言をしていたユニクロだったが、今回モヘア(アンゴラ山羊の毛)の使用をも中止することを決意したのは、その背景にはヤギの虐待問題があった。
南アフリカでのヤギ虐待
相次ぐ発表の裏には、動物愛護団体 PETAが伝えた、南アフリカの12の牧場で起きたヤギ虐待問題がある。
モヘアはアンゴラヤギの毛を編んで作られており、そのヤギの飼育環境の劣悪さが明らかになったのだ。
表に出た動画には、抵抗するヤギを力ずくで押さえつけ毛を刈ったり、生きたまま首を切り落とされる様子が映し出されていた。
このような事実が、様々なブランドのモヘア離脱への経緯となったとされる。
リアルファーを着ないモデルが続出
今回のモヘアからの離脱で再び話題になっているファーやレザーをファッションに使用しない動物愛護の観点。
近年ではファッション業界の人々の間でもリアルファーを着ないと宣言するものが増えている。
今年3月に行われたパリコレクションでは以前からファーフリー宣言をしていたStella Mccartney(ステラ マッカートニー)の質の高いフェイクファーが話題に。
2017年パリ版のVOGUEではアニマルライツ活動家でもあるブラジル出身のモデル、Gisele Bündchen(ジゼル•ブンチェン)を表紙に起用し、毛皮問題を訴えた。
フェイクファーを身にまとい、犬を抱っこする彼女の姿は理想のファッションの在り方のように見える。
また、元モデルのEva Shivdasani(エヴァ・シヴサダニ)はVOGUEJapanのインタビューに自身が過去に撮影の現場で起こした行動についてこう語っている。
「当時は今ほど動物愛護もさかんではなかったから、モデルたちも毛皮を着るのが罪だという意識が低かった。ある日の撮影で毛皮が用意されたことがあったのだけど、私の毛皮反対意見を聞いたモデルたちが全員、その場で撮影をボイコットしたことがあるの。もちろんスタッフやクライアントはカンカンだったけど、私のモデル時代の経験で最も誇らしいことの一つよ。現状や問題を知った上で自分の信念を貫き、ノーと言える勇気はとても大事だと思うの。」
このように一人一人の行動でファッション業界に大きな変革を起きようとしている。
事実、今年3月のパリファッションワィーク中も、ランウェイの裏で「このファーは本物?」と、リアルファーかどうかを気にかけるモデルが複数いたそうだ。
彼女たちは私服では毛皮を着ないと言う。コレクションで使用されているものがリアルファーだと告げると、悲しそうな表情で、「It was LIFE(これは”人生”だったのよ)」と言ったそうだ。
日本の芸能界では
日本の芸能人の間でも「ファー・フリー」の意識は広まりつつある。
モデルのローラさんや益若つばささん、吉川ひなのさん、アナウンサーの滝川クリステルさんなどがそうだ。
最近では毛皮問題に留まらず、動物愛護の観点で、ローラさんやダレノガレ明美さん等がインスタグラムで保護犬、保護猫の里親探しに積極的な姿勢を見せている。
元モデルのエヴァ・シヴサダニのように、仕事上でも毛皮にNOを言える人は多くはないだろう。
しかし既にファッションに関わる多くの人々が”NO FUR”の意識を強く持っている。その意識の連鎖が続けば、今後毛皮がマイノリティとなる時代が来るかもしれない。
しかし毛皮製品がこれだけ生産されている裏には、その産業で生計を立て生活している多くの人々がいることを忘れてはいけない。
自由なファッションを楽しむ先進国と、それらのブランドの生産工場や牧場が置かれる発展途上の国々。
過去にも工場の労働環境の悪さが多く取り上げられてきたように、一言に”ファーフリー”、”動物愛護”とは言い切れない問題がまだまだ数多くある。そういった問題とも向き合いながらファッション業界は変化していく必要がある。