ここ数年ファッション業界では、ストリートファッションがモード界のラグジュアリーファッションへも多大な影響を与えているように、世界各地でSupreme(シュプリーム)やPalace(パレス)を始めとしたスケーターブランドがヒップな存在として称えられている。
特に70年代、90年代を象徴的に、常にストリートがトレンドの発信地となってきたイギリス・ロンドン。
そんな最近のロンドンでは、スケーターシーンが第3波となる再ブームの兆しを見せており、若者の間でじわじわと拡大中だ。
スケーターカルチャーの歴史と結びつきが弱いように思えるロンドンで、なぜ今、新たなトレンドが生まれようとしているのだろうか。
ストリートアートとの結びつき
ロンドンといえば、ブリックレーン、カムデン、ショーディッチと呼ばれるエリアを中心にストリートアート、グラフィティが盛んな街だ。
ストリートアートを描く世界的に有名なアーティスト・Banksy(バンクシー)も、ロンドンから誕生し、彼の作品は今でも街のあらゆる所で目にすることが出来る。
これらのアートは時に、地元住民や警察からの厳しい取り締まりが起こり、アーティスト達はトンネル内や川沿いの高架下など、目に触れにくい場所を活動場所とした。
ストリートアートとスケーターカルチャーは時に強い結びつきを持っており、ロンドンのスケーター達はこういったアンダーグラウンドな場所に集まり、シーンが拡大していったのだ。
VANSが見せるロンドンのリアルなスケートシーン
ロンドンのスケートスポットとして最も有名なサウスウォークのエリアには、2014年にスケーターブランドとして名高いVANS(バンズ)のミュージアム「House Of Vans London(ハウス・オブ・ロンドン・バンズ)」が誕生した。
駅の高架下の5つのトンネルを改装し作られた場所は、元々シアターとして使われていた場所で、現在はスケートボード、カルチャー、ミュージック、アートが融合された複合施設だ。
ストリートアートシーンからひらめきを得たこの場所では、アンダーグラウンドな雰囲気と共にロンドンのリアルなスケートシーンを体感することが出来る。
屋内スケートボードパークが常設されている他、定期的にアートインスタレーション、ワークショップ、コンサート等のベントも開催しており、コミュニティスペースとしても広く役割を果たしている。
またイーストロンドン・ハックニーには、バンズのヴィンテージを扱った店「The Other Side of The Pillow London(ジ アザー サイド オブ ザ ピロー ロンドン)」がある。
ここでは普段なかなか見ることの出来ないような、ヴィンテージのスニーカー、Tシャツ、スケートボード等、レアなアイテムが販売されており、ファンが集まる。
ファッションへの影響
90年代後半にはスケーター、ヒップホップ、バギージーンズ、グランジと強く結びつき、これらは新たなファッションのトレンドを生み出してきた。
ストリートブームが続く最近の中で、特に記憶に強く残っているのは、モード界への多大な影響だ。
ロンドンベースのスケーターブランドのPalace(パレス)の誕生、ファッションシーンに新たな概念をもたらしたGosha Rubchinskiy(ゴーシャ ラブチンスキー)の登場と東欧スケーター達、ラフ・シモンズのお気に入りで有名なスタイリストOlivier Rizzo(オリビエ・リッツォ)が撮影に取り入れたThrasher(スラッシャー)のアイテム、90年代を代表する映画監督ラリー・クラークとJWアンダーソンのコラボ等、数え上げるときりが無い。
ストリートカルチャーシーンが根強く残る90年代後半では、スケートボード、スケーター達は影響力のある存在なのだ。
古いものと新しいものが絶妙にミックスされ、独特で個性的、エッジィなファッションが生まれ続けてきたロンドン。
スケーターカルチャーが発祥したアメリカ・カリフォルニアとはまた違った、アンダーグラウンドな雰囲気が不思議な魅力となっている。
この街のスケートシーン、スケーターカルチャーはまた新たなトレンドを生み出すのだろうか、引き続き目が離せなさそうだ。