イギリスでは先日、CHANEL(シャネル)が遂にアイウェアのオンライン販売をスタートした。

シャネルはこれまでに、ビューティーアイテムのオンライン販売をすでに始めており、オンラインで取り扱うカテゴリーの幅を徐々に広げているようだ。

http://chanel-news.chanel.com/ja_JP/home/2015/04/spring-summer-eyewear-campaign.gallery.html

しかし、ラグジュアリーブランドとして最もコアな部分である、レザーグッズやRTWのオンラインストアの追加は考えていないと言う。

消費者によるオンラインストアやソーシャルメディアの利用が増加しており、特にハイストリートブランドは率先してこの傾向を販売やプロモーション戦略に取り入れている。一方、ラグジュアリーブランドでは昨年、Eコマースによる売り上げは全体の24%を占めており、同様に増加が予測されている。

例として、バーバリーはラグジュアリーの中でもソーシャルメディアやEコマースの利用を真っ先に始めた先駆者であり、ターゲットである若い世代の購入率は増えている。今では、英国伝統のクラシックなイメージから現代トレンドをミックスしたブランドイメージに変化しつつある。

他のラグジュアリーブランドがEコマースの適用により成果を上げている中、なぜシャネルはEコマースに対し慎重になっているのだろうか。

Eコマース=コミュニケーションツール

今回のアイウエアのオンライン販売に関しても、今まで通り店舗では全種類販売を続けるのに対し、オンラインではシーズン限定やベストセラーなどの限られた商品のみ取り扱い予定である。これはブランド創立以来続く”消費者との交流の場=実店舗(ブティック)”という概念を元に進められている。

時代やトレンドが変化していく中、速くて便利なオンラインショッピングを好む人が増えており、この傾向をシャネルのブランド概念を守りつつ取り入れたかたちが、Eコマースを販売のプラットフォームとしではなく、ひとつのコミュニケーションツールとして使用することだ。

この実現の背景には、イギリスに拠点を置く、Farfetch(ファーフェッチ)とのパートナーシップが組まれており、シャネルはEコマースのエキスパートからノウハウを取り入れ、今回のオンライン販売をスタートさせた。

しかしポイントとなるところは、シャネルのアイテムが、ファーフェッチを通して販売されるのではなく、あくまでもシャネルの独自のオンラインサイトのみでの販売というところである。

グッチやバレンシアガなどを含む、2000以上のブランドを取り扱うファーフェッチだが、シャネルは販売の場を独自の店舗、サイト以外では増やさないことで、ラグジュアリーブランドとしての価値を守っているようだ。

https://www.odt.co.nz/lifestyle/fashion/chanel-runway-pokes-fun-worlds-tech-reliance

オンライン販売の他にも、ラグジュアリーブランドの顧客は個別化されたショッピングエクスペリエンスを求める傾向にあるようだ。

例えば店舗で買い物をするときに実際にその場にある商品の中から、タブレット上で自分が事前にチェックしたアイテムを見ることができ、更に違うサイズやカラーなどがあるか教えてくれる機能があれば、もっと新しいショッピング体験ができ、顧客を楽しませることができるだろうと考えているようだ。

もちろん、今後のEコマースの発展や、新しいデジタルプラットフォームの開発はファーフェッチとのパートナーシップの元、進められて行く。

YouTube公式チャンネル

その他にもシャネルはYouTubeのオフィシャルチャンネルで多くのフォロワー数と動画の再生回数を記録している。

公式チャンネルでは、主にマリリン・モンローをはじめ、ブランドのアンバサダー達による数分のショートフィルムとメイクアップの動画が公開されている。

ブランドアンバサダー出演のショートフィルムではシャネルの歴史や世界観が短い動画の中に詰め込まれており、最も多く再生されていることから、YouTubeを消費者と繋がるひとつのコミュニケーションツールとして成功をおさめている。

ラグジュアリーブランドとして

若い世代の消費者にアピールをしているビッグメゾンは、Eコマースを率先して適用しているようだが、ブランドの既存の顧客はこの意向に対してどう感じているだろうか。誰でもすぐ手に入る、ブランドが身近なものになる、ことで、ブランドの一般的なイメージが”ラグジュアリー”ではなくなってしまうのではないだろうか。

短期の売り上げ成長を求めるのか、長期のブランドの成長を求めるのか、シャネルはその点を理解した上で社会のトレンドをうまく取り入れている。

もちろん、各ブランドそれぞれ違うビジョンを持っているが、情報化社会が進みマス、ファストファッション – デザイナーズ – ハイエンドの境界線が薄れてきているようにも捉えられる。

ラグジュアリーブランドがこれからどのような革新的なデジタルサービスを進めていくか、注目すべきだ。