今ファッション界に衝撃と刺激を与えている、謎の料理人集団 であるGhetto Gastro (ゲットー ガストロ)。 

日本でも昨年、AMBUSH(アンブッシュ)とコラボを果たしたことでも知られ、その名を耳にしたことがある人もいるかもしれない。 一見厳ついギャング見た目に加え、料理人の彼らが作り出すストリートファッションの生(ナマ)”の空気感は不思議な魅力で、料理同様、クセになる味だと評判だ。 そんな天才シェフ集団ゲットー ガストロが生み出すファッションと、その密接な関係性とは?   

謎に包まれた天才シェフたちの正体 

 Ghetto Gastro(ゲットー ガストロ)は、ニューヨーク・ブロンクスを拠点に世界中で活躍する、天才と呼ばれる料理人集団だ。 

メンバーの中でリーダーを務めるのは現在32歳のJon Grey(ジョン・グレイ)で、その他 シェフを務める3人、Pierre Serrao、Lester Walker、Malcolm Livingston IIと共に、2012年にその活動がスタートした。 リーダージョンは幼い頃から料理が好きだったことに加え、ファッションへの興味も強く、ニューヨークファッション工科大学にてマーケティングを学んだ異例の経歴を持っている。 シェフであるブロンクス出身のマルコムは、ジョンと共に共同経営者を務め、世界一のレストランと称されるデンマーク・コペンハーゲンにある「Noma(ノマ)」にてパティシエを務めるという、実力の持ち主だ。 

彼らが掲げる目標、「地域をつなぐ食文化とコミュニティ力」は、移民を始めとする多民族が集うブロンクス地区が持つ独自のカルチャーと同時に、黒人文化への敬意を表したものであるという。 その多くは主に、70年代にハーレムやブロンクスで誕生したニューヨークの歴史を作ったファッション、ヒップホップカルチャーなどに影響されており、地元出身者である彼らならでは視点で形成された。 

また、彼らの最大の魅力は、食、ファッション、音楽、芸術を繫ぐ全ての要素を、完璧なバランスで作り上げ、一つの作品に仕上げることだ。 

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ブロンクスの空気をエッセンスにしたファッションとの融合 

 元々ファッションの仕事をしていたジョンの力もあり、そのクリエイティブ力の高さが認められたゲットー ガストロは徐々にその名をファッション界でも知られていく結果となった。 それを象徴するかのようにラブコールは鳴り止まず、過去にはいくつかのブランドとコラボレーションを果たしている。 

2016年秋に開催されたパリファッションウィーク中には Rick Owens(リック オウエンス)のチームディナーを担当テロ直後の悲しみに溢れたパリの空気を感謝祭のような温かみのあるものへと変えたと高く評価され、その後いくつかのプロジェクトを友人としても共にしている。 

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同じくファッションウィーク中には、アーティストのブッキングエージェンシーUNTOLD STORIESとコラボし、「Waffles + Models」と題したアートと音楽、ファッションが融合したパーティーを開催。 

クリエイティブ集団A$AP Mobの中心人物、A$AP Bari をDJにブッキングするなど、パリで最もヒップなパーティーとして話題を集め、ブロンクスの空気絶妙に持ち込んだと成功を収めた。 

またアメリカ・マイアミで開催されたArt Basel(アート バーゼル)では、 パリのストリートブランドPIGALLE(ピガール)のディナーパーティーを開催し、まるでコカインを連想させるようなココナッツを砕いた白いパウダー状の料理をテーブルに並べるなど、マイアミの快楽主義をユーモラスに表現し、そのコンセプトやアート性が高く評価された。 

そして昨年には、東京で開催されたアマゾンファッションウィークにて、AMBUSH(アンブッシュ)とのコラボアイテムの展開、ケータリングを担当し、日本でも話題となった。 

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このようにファッションブランドが彼らに求めるのは、料理だけでなく、彼らの持つ独自のセンス、高いクリエイティブ力なのだ 

 AWAKE NYとブラックカルチャーを祝う最新コレクション 

そんな彼らを最新コラボ相手に選んだのは、元Supreme(シュプリーム)のディレクターAngelo(アンジェロ)が手がけるAWAKE NY(アウェイク ニューヨーク)である 

ストリートファッションで一番注目されている存在であるといっても過言ではないブランドとのコラボでは、グラフィックTシャツとジャケットカプセルコレクションを展開。 フォトグラファーには、ラフ シモンズのキャンペーンなども手がける旬なフォトグラファーJoshua Woodsを起用し、そのヴィジュアルも話題に。 黒人歴史月間に発売がスタートしたコレクションは、主に黒人文化の統一を祝う内容となっている。 

アイテムには黒人文化への敬意を表した活動のグラフィック他、アフリカ系アメリカ人の独立権を求めたブラックパンサー運動の象徴的な拳のシンボルが胸ポケットに付いたミリタリージャケットなど、メッセージ性が強いものとなっている。 コレクション立ち上げを祝うイベントの一部とし、ゲットー ガストロが創業時から続けている「Freestyle Friday」と名付けた、食事を通しコミュニティのあり方を考え直すフードプロジェクトパーティーも開催された。 また同コラボの収益の一部は、サウスブロンクス地区へ寄付されるなど、地元への慈善活動の役割も果たしている。 

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https://www.instagram.com/p/BuHVWDMHHl-/

常に自身のルーツを探求するだけでなく、そのコミュニティを食事を通し新たなパワーへと変えていく、不思議な魅力に溢れるゲットー ガストロ。 

彼らが取り組むプロジェクトは料理を通し、現代のモダニズムを象徴しているかのようであり、多様性が求められているファッションにおいて、まだまだ高い需要がありそうだ。 謎の料理人集団が作り出す作品、ファッションとの関係性、発信するメッセージから今後も目が離せなさそうだ。