「僕は東京の大学生」で始まるTikTok動画でおなじみ、動画クリエイターの修一朗。中央大学に通う大学4年生の彼は、今年5月21日にTikTok動画を開始。すでにフォロワーは86万人を超え(9月22日時点)、自身の日常を切り取ったストーリー性のある動画で一躍話題に。今回は修一朗の意外にも戦略的な動画制作やブランディングに迫った。一種の”バズり”で終わらせない彼の人柄と緻密な努力とは?

自分のスタイルで勝負できる確信があった

-本日は修一朗さんのTikTok動画がバズった理由を探っていきたいと思うのですが、ます最初にTikTokを始めたきっかけを教えてください。

修一朗:もともとYouTubeを4年間やっていたのですが、登録者1000人から数がなかなか伸びなかったんです。その原因は強みを出せなかったから。割と編集能力はあったと思うんですが、やっぱり動画が長いと視聴者を飽きさせてしまうんですよね。その点、TikTokだったら自分のメリハリのある編集を活かせるかなと思って、始めました。要は尺の問題ですね。

-修一朗さんのTikTok動画といえばロードムービーの様な日常のコンテンツが印象的ですが、始められた当初は「コーラを飲んでゲップをせずに47都道府県言う男」のように、企画モノの動画を投稿されていましたよね。

修一朗:どんなに面白い動画でも最低限フォロワーがいないとバズらないと思ったんです。だから、まずは企画モノみたいにチャレンジングな動画で注目を集めて、フォロワーを獲得しようかなと。3万人くらいフォロワーがいれば、そこからは自分のスタイルで勝負できるという確信がありました。

@tuckinshuichiro1日目 ##30日後にゲップせずに47都道府県言う男 ##1日目 ##おうちで過ごし隊♬ bad guy – Billie Eilish

-戦略的に活動されているんですね。ということは、TikTok動画も緻密に構成を練られているんでしょうか?起承転結を意識されているとお伺いしたのですが…。

修一朗:そうですね。起承転結も意識しますし、動画を撮る前に、必ずセリフのスクリプトも作ります。僕が憧れるYouTuberのケイシー・ナイスタットの「ストーリー性のある動画には、必ず起承転結がある。Body(本論)とConclusion(結論)があると、視聴者が投稿者自身のことを深く知れる」という言葉に感化されて。
例えば、TikTokに多いダンス動画は結論しか分からない。ストーリ性がなくてもバズるけど、投稿者のパーソナリティを知ることができなければ、ファンは定着しないと思うんです。

-なるほど。音楽に置き換えても、1楽曲がTikTokでバズっても、アルバム全曲を聴きに戻る人は少ないですよね。ケイシーさんが修一朗さんにとって、師匠のような存在なのでしょうか?

修一朗:はい!僕のすべてにおける原点であり、頂点ですね(笑)。

動画の“抜き”は音楽が鍵

-音楽も動画には欠かせない要素の1つですが、選曲のポイントは?

修一朗:まずは僕が日本語で喋ることもあって、邦楽は言語が被ってしまうので避けています。日本人にとって情報力の少ない音楽……基本的に洋楽をBGMとして流していますね。

-動画投稿を始めてから音楽の聴き方は変わりましたか?

修一朗:変わりましたね。以前はAメロ、Bメロ、サビ……大まかに聴いていたんですけど、今は自分の中でもっと細かく曲を聴くようになりました。Aメロの中に幾つの展開があるのかとか…。例えば、動画を作る時も曲が盛り上がった後は一旦BGMを止めて、地声で食べ物を注文したり、ため息を入れたり、何かしらの展開を挟みます。そうすることで動画に“抜き”が作れるんです。

-因みに、修一朗さんが最近よく聴いている曲があれば教えてください!

修一朗:頻繁に聴くのは、ブラックミュージックですね。アース・ウィンド・アンド・ファイアーの「september」とクール&ザ・ギャングの「Celebration」は死ぬほど聴いています(笑)。あとは、ファレル・ウィリアムスの「happy」。80年〜2000年代の、ハイボイス・ハイテンションな楽曲が好きです。

-修一朗さんは海外で育ったんですよね、洋楽を好まれるのはその影響も?

修一朗:幼少期にアフリカに住んだことがあります。でも、洋楽を聴くようになったのは中学からですね。南アメリカを出て、小学校は日本の学校に通っていたんですけど、英語が喋れないことがコンプレックスだったんですよ。だからまずは音楽に触れてみようと思って、聴き始めました。

映画を思い浮かべると、BGMが僕の中で流れる

-同じYouTuberやTikTokerで気になる方はいらっしゃいますか?

修一朗:YouTuberは先ほどお話ししたケイシー・ライシスターと、エマ・チェンバレン。エマはアメリカ在住・若干19歳の女性YouTuberなんですが、すごくエネルギッシュなんですよ。Fワードも多用するんですけど、その飾らない人柄が魅力的で、編集方法も他の方とは全然違う。動画でお手本にするのはケイシーとエマのトップ2です。日本の方だと、「どうでもいい日常のニュース」のわっきゃいさんですかね。わっきゃさんの動画はクリエイティブだなと思いますね。僕自身もかなりインスパイアされています。

-海外の動画クリエイターの方々に影響を受けることが多いと。修一朗さんが思う、国内・国外での動画制作の違いは?

修一朗:まずは海外は字幕がない。むしろ「字幕がなくてもわかるでしょ?」みたいな空気感がありますよね。一方で日本は字幕文化なので、字幕がないと成立しない。でも僕は正直字幕って邪魔だなと思っているので、なるべく使わないようにしています。

-字幕がないと寂しく感じるのは、日本のバラエティの影響があるかもしれないですね。映画も年間1000本鑑賞されるとのことですが、修一朗さんの動画に影響を与えた作品はありますか?

修一朗:『マイ・インターン』と『ゴーストバスターズ』です。どちらの作品もBGMとストーリーがぴったりなんですよ。映画を思い浮かべると、まずBGMが僕の中で流れる。そんな風に、音楽に合ったストーリー性のある動画を作ろうと思いました。映画は4本観ることをタスクにしていますね。あとはYouTube動画も。ケイシーの動画は10本、エマの動画は5本毎日観ています。単純に好きだし、勉強になるので。

-日々の生活をルーティン化させているんですね。

修一朗:僕の生活はルーティンに縛られています(笑)!TODOも時間通りにリスト化して……やばいやつですよね(笑)。でもそれが染みついちゃってるので、やめたら逆にストレスになるんですよ。動画撮影もちゃんと時間を決めてやっています。多分、自己中なんですよね。スケジュールにあっていないと落ち着かない。流されにくいといえば聞こえはいいけど、長所か短所かは分からないです…。

中央大学の生徒が頑張ってるな〜って、応援したくなる

-動画制作に対してのストイックな一面が印象的です。修一朗さんが”バズった理由”はご自身で確証を持たれているのでしょうか?

修一朗:クラスに絶対一人はいるようなどこにでもいるやつだから、じゃないですかね。僕はすごく普通なんですよ。自分でいうのもなんですけど、顔もイケメンじゃないけどめちゃくちゃ悪いわけでもない。全部が中の上なんです。「友達にしたい」っていうコメントもよく来るんですけど、友達のような身近に感じられる存在なんだと思います。お金もない普通の学生がリアルを晒しているから、触れやすいコンテンツなのかなと。
それに中央大学はイケイケしていないし、八王子にキャンパスがあるからそもそも通っている人がいない。いわゆる隠キャと呼ばれる人も多くて。中大生の動画がバズるのも、無理に気取った演出がないからだと思うんです。なんか中大の生徒が頑張ってるな〜って応援したくなるんじゃないかな…。

-「東京の大学生」というフレーズが印象的ですが、もしかしたら近くに住んでるのかもしれない、そういう身近さがありますよね。

修一朗:とにかく視聴者の方々と同じ土俵にいるっていうことを印象付けています。だからあまりセンシティブなことを言わないようにしているし、行くお店も老舗料理店とかじゃなく、100%みんなが知ってる飲食店に行っています。サイゼリアやすき家、スターバックスだったら絶対にみんな知ってるじゃないですか。

-とことん視聴者に寄り添っているからこそ共感を得られるんですね。ちなみに、今までで一番評判の良かった動画は?

修一朗:AppleのMacbookを買いに行った動画は伸びましたね。僕自身も3日で300〜400万再生はいくだろうなと思ってアップしました。平均は250万再生くらいなんですけど、長く続けているとバズる要素がつかめてくるんです。ポイントはステイタスと体験、それから体験後の感情。例えば、いつもは八王子にいる僕がおしゃれな原宿で散髪をする。これだけで修一郎のステイタスと体験が動画に詰まっていますよね。その後に散髪をした自分を見て「めっちゃイケメン」って思った感情を入れるんです。

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誰かの真似を咎めるのは、TikTokの繁栄を妨げる

-動画のフォーマットが徐々に確立されているのですね。最近は修一朗さんの動画をパロディする方も増えてきましたが、そこに関してどういった思いがありますか?

修一朗:最近はありがたいことに真似してくださる人も増えて、毎日20本くらいはメンションがきます。それに対して僕の動画に「修一朗の“二番煎じ”いますよ」っていうコメントがあったんですけど、僕自身“二番煎じ”って言葉は嫌いなんですよ。だってそもそも僕がケイシーのスタイルをお手本にしているんで、それをいうなら三番煎じじゃないですか。僕のスタイルを好きになってくれた方が動画を真似して、また新たなスタイルが生まれることもある。それを咎めるのは、TikTokの繁栄を妨げることになるんじゃないかな。だから二番煎じじゃなくて、インスパイアやリスペクトって言い方をしてほしいなと思います。

-動画クリエイターとしての今後の理想像を教えてください!

修一朗:TikTokでは、変わらず長尺動画で勝負していこうと思います!大げさかもしれないですけど、やっぱり「●●といったら修一朗」って言われてみたい。だから、修一郎のスタイルは長尺、長尺といえば修一朗という意識づけをしていきたいです。

-最後に、ファンに向けてメッセージをお願いします。

修一朗:いつも応援ありがとうございます!TikTokキモチエエ!!

Photographer:Maho Korogi
Interview:Ayaka Yoshimura
Edit&Text:苫とり子(tomatorico)