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YouTubeチャンネル「HeartStation365」をご存知だろうか?「Chillでゆるっと心地のいいBGMをお届けします。」概要に記される通り、それぞれの日常に合わせた音楽をBGMに落とし込む本チャンネルは、登録者5万人を超え人気作品は再生回数103万回を記録。チル×ラップをメインに展開するコンテンツは、音楽とリスナーの出会いの場にも。
サブスクのプレイリストカルチャー始めオンラインでのディグリが容易になった今、HeartStation365は何故YouTubeというフィールドを選び、BGMの姿勢を貫くのか。制作者本人の趣味趣向からコンテンツの将来性まで、日常に揺蕩う音楽と共にお話頂いた。

ーー最初に、HIPHOPやラップの楽曲をYouTubeで紹介しようと思ったきっかけを教えてください。

色んな経緯があったんですが、1つはただの自己満足ですね。自分が普段聴いている楽曲をBGMに、映像を作りたいという思いがあって。そして、もう1つはコロナの影響でテレワークになって、自宅で見ても聴いても癒されるBGMが欲しいと思ったのがきっかけです。

ーー確かに、コロナ禍で音楽の聴き方って大きく変わりましたよね。作業中のBGMや空間演出として聴く方も増えたかと思います。

そうですよね。例えば仕事でちょっと疲れた時、気分転換したい時など、自分と同じような気持ちを持つ人たちにそっと寄り添える楽曲を紹介できればいいなと思っています。

ーーYouTubeを始める前はどのような音楽を聴かれていたのでしょうか?

私は大学からダンスを始めたのですが、そこまではJ-POPをはじめ、耳から聴く音楽が多かったんですよね。だけどダンスで率直な言葉や歌詞を表現するようになってから、リズムやビートだったり身体で音楽を聴くようになったんです。そこで表現のためにクラシックやR&B、ソウルなど、幅広いジャンルに触れるようになりました。

ーーそこから音楽の聴き方に変化はありましたか?

昔から好きではあったのですが、チル系のような心地良い音楽をピックするようになりましたね。やっぱり先ほども言ったように、ダンスを通じて音楽を身体で表現するようになってから、自然と身体に入ってくるものを求めている感じがします。

ーー例えばYouTubeのコメントや動画の再生回数を見て、特に視聴者の反応の良い傾向はありますか?

ありますね。いくつか気づいたことがあって、1つはチルのように居心地が良い音楽は誰しも求めているんだなということ。それから、テーマに「夜」があるプレイリストは視聴者数が伸びるということです。

ーー「朝」ではなく「夜」なんですね。

最初にバズった動画は朝をテーマにした「朝に溶けていく日本語ラップChill mix」だったのですが、最近の傾向では「夜に聴きたい日本語ラップChill mix」や「Taxiで夜の帰り道聴きたいヒップホップ/R&B Chill mix」のように「夜」がタイトルに入る動画が人気になっています。

ーー私が最初にHeartStation365さんの動画を見つけたのも、「深夜にカッコつけて聴きたくなる日本語ラップChill mix」でした。タイトルに惹かれたんですよね。

ありがとうございます。やっぱりみなさんがYouTubeを見るのも比較的夜が多いですし、夜って仕事を終えて普段とは別の世界に行きたくなるじゃないですか。お酒や音楽を嗜んだり、人間誰しも「夜」に酔いたい気持ちがあるんだと思います。HIPHOPとの掛け合わせもいいんじゃないですかね。

ーーその中でもご自身の番お気に入りは?

再生回数は一番低いんですけど(笑)、個人的には「Warm Rainy Day / lofi study bgm」が好きですね。雨が好きなのもありますし、ジャケットに使わせていただいた新海誠さんの映像と合わせて「居心地の良さや柔らかさを感じられる動画を」と思って作ったものです。

ーーHeartStation365さんは音楽だけではなく、楽曲の雰囲気に合った画像や映像にもこだわっていらっしゃるイメージです。

そこは自分でもかなりこだわっている部分でもありますね。YouTube上に動画が数多ある中で、再生してもらうにはファーストビューが一番大事。だから意識して、自分が納得できる画像や動画だけを選んでいます。最近は楽曲探しよりも画像選びに苦労してるかな(笑)

ーーYouTubeを初めて、音楽・ビジュアル面で新しく見えてきたことはありますか?

質問とは少しズレるかもしれないですが、ローファイヒップホップと呼ばれるジャンルの楽曲を YouTubeで投稿するようになり、「こういう音楽のジャンルって実は世の中に需要があって、まだ知られていないだけなんだ」と思いました。なのでテーマを持たせることで、新しい音楽を探している人たちが知らないジャンルに辿り着くきっかけを与えることが私の存在価値なのかなと。

ーーたしかに具体的なジャンルやアーティストを絞らず、何となく聴きたいものを調べる時って、具体的なキーワードがないじゃないですか。そこに、例えば「休日に聴きたいプレイリスト」とか、シーンにあったテーマがあると楽曲にもアクセスしやすいですよね。

そうなんですよね。私自身もダンサーの方が挙げている動画だったり、日常で聞こえてきた音楽をシャザムで調べて、新しい楽曲を発掘しているのですが、やっぱり探すのは大変なんですよね。だから何となく気分に合ったものを探している時に、私が提供している楽曲から好きなアーティストや楽曲を発掘してもらえたらと思っています。そういう意味では誰かの役に立てるのは嬉しいです。

ーーHeartStation365という名前にもそういった思いが込められているのでしょうか。

「居心地の良さ」というテーマも込められているんですが、もともと駅が好きで。どの駅もそれぞれ趣があって、沢山の人の思い入れがあるイメージなんですよね。だから、エブリデイ・エブリタイムで心のシーンに合った曲を提供できる“365日稼働している駅”というイメージでHeartStation365という名前にしました。

ーーそれぞれの楽曲・テーマが誰かの停車駅になるってことですね。

お上手ですね(笑)。そうですね、そんなイメージでやっていこうと思っています。

ーー因みに、普段からラップやHIPHOPを好んで聴かれているのですか?

ラップやHIPHOPもすごく聴きます。でもどちらかといえば、ローファイヒップホップが中心。特にそのジャンルを立ち上げたと言われているNujabesさんと一緒に楽曲を作っていらっしゃったUyama Hirotoさんという方にすごく憧れています。彼の曲には歌詞が無いものが多いのですが、純粋にメロディが美しい。ジブリの久石譲さんの楽曲って気持ちよくて、情景が浮かぶような作品だと思うんですが、私の中でUyamaさんはまさにHIPHOP界の久石譲さんなんです。

ーーなるほど。中でもオススメの楽曲を教えてください!

一番好きなのは「エンドオブザロード」です。私は、死ぬ前に聞くならこの1曲と決めています。死ぬ前に聴いても、苦しく無いのかなって(笑)。実はあまり広めたくなくて、プレイリストには入れていないのですが……。

ーー他にも今、個人的に注目されているアーティストはいますか?

なんだかんだ追っちゃうアーティストが2人いて、1人はiriさん。声もメロディもめちゃくちゃかっこいいですし、中性的な感じが好きです。歌詞には女の子っぽい部分もありながら、声のかっこよさが特徴的で毎回しびれますね。思わず踊りたくなります。

男性アーティストでいえば、藤井風さん。彼の弾き語りの動画は何回も見ました。「じゃけん」っていう岡山弁のお茶目な部分と、お父様から受けた英才教育をどんどん消化している天才肌とのギャップ。そして藤井さんの曲も、iriさんと同じでどれもハズレがないと思います。自分が好きな曲は全部カバーしてほしい(笑)。

ーー私も「木綿のハンカチーフ」のカバー動画、繰り返し見ています……!

どれもすごく良いですよね。ビリー・ジョエルはじめ、往年の海外アーティストの楽曲カバーも、オリジナルとは別次元な感じが最高です。後は、1年くらい前から植松陽介さんというアーティストを追っています。

ーーどういったところに惹かれて追っていらっしゃるんですか?

どれもテーマが面白いんです。個人的には「会いたいけど、眠たい」っていう「恋人に会いたいけど、仕事が大変で眠たくてしょうがない、でも会いたい」の狭間を行き来する楽曲が好きです。そういった細かいシーンに合った、グッと来る曲をたまに出してくれるんですよね。

ーー最後に今後の目標や展望があれば、教えてください!

私の場合、収益化しているチャンネルもないので数字的な目標は持たず、テーマが尽きるまで365日稼働で皆さんの心に寄り添ったものを作っていければなと。

また、アーティストの方やレーベルの方から動画へ楽曲を載せていただきたいというオファーをいただきます。私の趣味趣向との相性にもよりますが、そいうった方々とのコラボレーションは今後展開していきたいなと思います。休憩しながらも気長に続けていければと思っているので、今後とも視聴者の方には応援いただけたら嬉しいです!