アパレル業界の買収や倒産が続く中、スポーツメーカーの成長が目まぐるしい。
現在、世界1位を独走するアメリカのNIKE(ナイキ)は、コンバースを子会社に持ちながらも、売り上げの90%はNIKEと、アスレジャーやスニーカーブームの後押しを受け、増収を続けている。
そして、業界2位でナイキの最大のライバルがドイツのadidas(アディダス)である。
長年、ナイキとアディダスの2ブランドが、このスポーツアパレル市場のシェアを大きく握っており、さらにその下にも、アンダーアーマーやプーマなどの世界的ブランドが数多く存在し、決してブルーオーシャンな市場ではない。
しかし、この群雄割拠な市場の中で独自のポジションを築き、成長を続けているのが、カナダ発のヨガウェア・ファッションブランド『Lululemon Athletica (ルルレモン・アスレティカ)』(通称:ルル)である。
Lululemon Athletica (ルルレモン・アスレティカ)
ルルレモンの創業は、Chip Wilson(チップ・ウィルソン)氏が、1998年にカナダのバンクーバーで、ヨガにインスパイヤ―されたスポーツ・ウェアのお店として創業したことがきっかけにスタートした。
最初は、ただ商品を販売するのではなく、健康な生活について話したり、皆でヨガを一緒に出来るようなコミュニティーを創り上げることが目的だったそうだ。
そんなユニークなコミュニティーが生み出したヨガ・ウェアを中心としたアパレルブランドが、ルルレモンである。
当初バンクーバーで1店舗しか考えていなかったがルルレモンの店舗は、他のカナダの都市、アメリカ カリフォルニア州、オーストラリアへと着々と拡大していった。
10年で10倍を超える成長率
ルルレモンの売上は、2007年に1億4796万ドル(約150億円)でしたが、 直近2017年の3月の決算では23億4439万ドル(約2300億円)と、約10年で10倍を超える成長を果たしている。
そして、注目すべきは高水準の営業利益率。
利益率は、ここ10年間あのナイキをも上回っており、小売業全体を見ても非常に高い水準を保っている。
<営業利益率>

ヨガと聞くと、女性からの指示が圧倒的なイメージではあるが、好業績を支えた新規のお客さんの30%は男性であったという、そして一番売れたのが、68ドルするメンズのショーツパンツだそうだ。
シンプルで機能性にとことん拘り、すごく軽く通気性の良いメッシュ生地が男性客にも大ヒットしているそうだ。
近年アメリカでは、ルルレモンの赤いバッグを見たことがある人も多いのでは?

ルルレモンの成長を支えた4つのブランディング
ルルレモンがこれだけ高い利益率を保ちながら急成長している要因として、圧倒的な品質へのこだわりと、ブランディング戦略がある。
ナイキ、アディダスなどの競合の多いこの業界で、独自のポジションを築き上げたルルレモンの戦略をいくつかご紹介しよう。
1.無料クラスで、ヨガ人口を増やす
ルルレモンは、カナダ/アメリカ/イギリスの成人4000人にヨガに関しての調査を行った結果、約3割もの人がヨガに関心を持っていなかったそうだ。
「ヨガのやり方を知らない」または「ヨガは十分な運動とは思わないのでやらない」など様々な意見があり、多くの人は、ヨガをやる機会がそもそもないのだということに気が付いた。
そこでルルレモンは、まずはヨガについて知ってもらい、体験してもらうことからはじめようと、ルルレモンの店舗以外でも、世界中で無料のヨガクラス、ランニング、メディテーションなどのイベントを行った。
その施策が、ヨガに興味を持つ人口を増やし、ルルレモンの認知拡大にも繋がったのだ。
そのイベントは、今でも世界中で開催されており、世界中にヨガ人口を増やして、世界をより健康にする事に力を入れている。
2. 明確なターゲットと、商品ラインの充実
ルルレモンは、40-50歳の割と財布に余裕があり、かつヨガやスポーツに関心の高い女性層をターゲットにしていることから、スポーツウェアブランドとしての高級感をキープしている。
ギア―と呼ばれる、ヨガやピラティスで使用する小物を豊富に取り扱っている。ヘア・バンドや、ヨガ・パンツのポケットの位置まで小物でも細部にまでこだわっており、ここにもルルレモンのブランドとしての価値が反映されている。

3. 圧倒的な品質へのこだわりとルルレモンというブランド力
ルルレモンは、決して価格の安いブランドではない。ヨガパンツでも$98(約11000円)と、他のメーカーのヨガウェアであれば半額ほどで手に入るだろう。
価格競争になって、品質に対して妥協するくらいなら、少々高くてもお客様に満足して貰える商品作りを心がけている気持ちの現れでもある。
そういった姿勢が、ルルレモンのブランド価値の向上にも繋がっており、実際に他のメーカーを上回る質の良さ、ルルレモンというブランドが備わっている。
また、商品の在庫数を少なくして、入れ替わりを頻繁にすることから希少価値を高め、顧客に早めの購入を促している。
希少価値を高くすれば顧客が購入を先延ばししたり、セール時まで購入を待たれる心配がない。
4. ヨガ団体やスポーツ・ジムなどパートナー契約を結んでいる
ルルレモンは、多くのスポーツ・ジムとのパートナー契約を結び、ブランドの宣伝をしている。
また、スポーツチームやコミュニティーのスポンサーとなり、必要なスポーツウェアやギアーなどを提供することもしている。
先日6/21の世界の『国際YOGA Day』に、その日の売り上げの利益100%(1億円以上)をヨガ団体に寄付したと発表した。

ルルレモンは、まだ世界中に400店舗ほどしか展開しておらず、日本にもまだ4店舗と、アジアでの店舗数、知名度がまだまだ低い。
今後アジアという巨大なマーケットで成功すれば、ナイキやアディダスをも脅かす存在になるのではないかと投資家からも、すごく期待されている。