米ランジェリーブランド「Vctoria’s Secret(ヴィクトリアズ・シークレット)」は、先月23日の投資家向けの業績発表にて、同ブランドの既存店売り上げが1%減少したこと、年内に20店舗を閉店する予定であることを発表した。

以前から、顧客離れや業績低迷がたびたび報じられていた「ヴィクトリアズ・シークレット」。かつてはランジェリーブランドのトップに君臨したブランドは、なぜこのような事態に陥ってしまったのか、その理由を探りたい。

時代に合わない“セクシー路線”が顧客離れの原因に?

 

Vctoria’s Secret facebookより

「ヴィクトリアズ・シークレット」は、今までそのセクシーな路線で人気を集めてきた。

選りすぐりの美女集団である「ヴィクトリアズ・シークレット」のモデル、“エンジェルス”がセクシーなランジェリーを身に着け、挑発的なポーズをとる同ブランドの広告は、かつては女性達の憧れそのものであった。「私もこんな風になりたい」という思いから女性達は「ヴィクトリアズ・シークレット」のランジェリーを選び、その結果「ヴィクトリアズ・シークレット」を世界的な人気を誇るブランドへと押し上げたのだろう。

その事をよく理解しているブランド側も、かつてオンラインメディアに“エンジェルスは男性目線ではなく女性目線で選ばれる”“このブランドのほとんどの消費者は女性であるため、いかに女性に対してアピールできるかが重要”だと語っていた。

広告ビジュアルを「ポルノ」と指摘する声も

女性客に対するアピールの重要性を理解していたはずの「ヴィクトリアズ・シークレット」だが、いつしか顧客である女性達との間に温度差が生まれてしまったようだ。

2016年に打ち出したキャンペーンビジュアルには、「明らかに性的」との怒りの声があがった。

Vctoria’s Secret facebookより

この写真を掲載した「ヴィクトリアズ・シークレット」のfacebookには多くの苦情コメントが殺到。

「あなたたちは誰に商品を売っているの?女性、それとも男性?」「エンジェルスをポルノスターのように描くのはやめて」と、「まるで男性向けのポルノのようである」との指摘が相次いだ。

他にも、ある顧客は「ヴィクトリアズ・シークレット」店舗に飾られてあるきわどい写真のディスプレイについて、同社の若年層向けブランド「PINK」の顧客であるティーンにはふさわしくないと苦言を呈した。(「ヴィクトリアズ・シークレット」と「PINK」は同じレジを使用するつくりの店舗が多い)。

「ほぼポルノ写真」とfacebook上で苦言を呈した、ジェシー・シーリーが撮影した写真 出典:https://www.businessinsider.jp/ 

「#MeToo」運動の広まりでさらなる逆境へ?

2017年、ハーヴェイ・ワインスタイン事件をきっかけに、SNS上で性的暴行やセクハラの被害を訴える「#MeToo(私も)」運動が広がりを見せた。

調査企業のユーガブ・ブランドインデックスは、「ヴィクトリアズ・シークレット」苦戦の理由について、「#MeToo」運動も影響しているのではないかと指摘する。

同ブランドの売り上げが低迷しはじめたのは2013年のことで、「#MeToo」運動が広がる以前のことだが、ユーガブ・ブランドインデックスの関係者は次のように語っている。

自分のワードローブやブランドにおいて何を重視するかという点について、これらの活動をきっかけにより深く考えるようになった消費者もいるはずだ。政治とファッションは、それほど深く関連しているものではないように思えるかもしれない。だが、政治色を強める世界の中で、これらの結びつきはますます強まっている」出典:フォーブスジャパンhttps://forbesjapan.com/articles/detail/20868

ライバルブランドの出現、製品の質の低下を指摘する声も

では、そのセクシーすぎる広告が売り上げ低迷のすべての理由になっているかといえば、そうでもない。「ヴィクトリアズ・シークレット」を長年購入してきたという顧客から、質の低下を指摘する声があがっている。

「質は下がっているのに、価格を上げるのはやめて!わたしはここのブランドでたくさんの買い物をしてきたけど、今はそれほどでもないわ。」「15年以上ここの顧客だったけど、最近の質はひどい。5枚買ったパンティーが、1度の洗濯でほとんどボロボロになってしまった。カスタマーサービスに電話したけど、その対応もひどかった。もうここでは買い物をしない。」「2000年代前半と比べて、クオリティは悪い方に変化している。」

これらはfacebookに寄せられた顧客からの声で、似たような意見が多くあがっている。

「ヴィクトリアズ・シークレット」は、セクシーすぎる広告で客足を遠ざけているだけでなく、長年の顧客達からも愛想をつかされてしまっているのだ。

ある顧客はfacebookに、「あなた(ヴィクトリアズシークレット)は商売に貪欲になるあまり、顧客への感謝を忘れてしまっているようね」と書き込んだ。

そんな「ヴィクトリアズ・シークレット」の低迷とは反対に、近年アメリカで売り上げをのばしているランジェリーブランドがある。American Eagle Outfittersが展開する「 aerie(エアリー)」だ。

aerie公式サイトより

「エアリー」は、“ The Real You is Sexy (ありのままのあなたが魅力的) ”というポリシーを掲げ、スーパーモデルの起用も写真の修正も一切行わないことで知られている。

男性目線ではなく、消費者である女性に“本当に”寄り添った親しみやすい広告や商品で人気を伸ばし、「ヴィクトリアズ・シークレット」はこうしたブランドにシェアを奪われているという。

多くの顧客から不満の声があがっている「ヴィクトリアズ・シークレット」。それらの問題を解決し、再び“もっともクールなランジェリーブランド”に返り咲く日はくるのだろうか?同ブランドの今後の動向に注目したい。