アメリカのヒップホップシーンに、RaysCorruptedMind (レイズコラプティドマインド、以下レイ)と呼ばれる人物がいる。
ラッパーやモデルをこなすスーパースターTRAVIS SCOTT (トラヴィス・スコット)のパーソナルフォトグラファーだ。その他、去年の秋にはNIKE (ナイキ)とNBAのコラボレーションにおいても写真撮影を務めた。
彼はフォトグラフに関する正規の教育は受けていない。界隈にツテがあったわけでもない。完全にゼロからスタートしたレイが体験したシンデレラストーリーは、今彼にどのような影響を及ぼしているのだろうか。
レイに魅了されたストリートシーン
もしかすると、レイを話題に挙げるのは少し遅すぎたかもしれない。今やアメリカンストリートのファッションシーンにはなくてはならない存在であり、インスタグラムのフォロワーもここ半年で爆発的に増加しているからだ。
独特なアングルにくすんだフィルタリング。アングラでちょっとアブない香りのする、トラヴィス・スコットを被写体としたレイの写真は100万近いLIKEをインスタグラムで稼ぐ。
ライブのステージ、日常生活、恋人Kylie Jenner (カイリー・ジェンナー)との特別なひと時。その全てをパーソナルフォトグラファーであるレイがシュートしている。トラヴィス・スコットがベルリンのカルチャーマガジン「032c」の表紙を飾った写真ももちろん彼だ。
ところで、レイの年齢や本名、その他の素性は謎に包まれている。そんな彼が、昨年HYPEBEAST (ハイプビースト)に自身の仕事を得る喜びを話した。
カメラとシューティング欲のほかは、専門知識もツテも持たずにキャリアをスタートしたと語る。街ゆくファッショニスタ、インスタで見かけた人々に、スルーされながらも「お前を撮りたい」と伝え続けた。
初めて彼に反応したのはラッパーのPlayboi Carti (プレイボーイ・カーティ)だった。翌日の予定を聞かれ、ツアーライブするから来いよと呼ばれる。その次がトラヴィス・スコット。
同様に翌日に会うことになる。その後彼のパーソナルフォトグラファーになることとなった。
今では、MIGOS (ミーゴス)やLil Yachty (リル・ヤッティ)、Kendrick Lamar (ケンドリック・ラマー)などヒップホップ界の交友関係は広く、果ては冒頭で触れたように、ナイキやNBAまでもが彼に仕事を依頼する。
「（メッセージで）トラヴィスに会ってみたいって言われたんだ。スゲェクレイジーなことだった。…そのあとはナイキから電話が来て、広告用の写真を頼まれた。信じられなかったよ。俺はやりたいことをやってるだけ。」（HYPEBEASTより）
レイが撮る写真は映える。カルチャー誕生当時と違い、現代のヒップホップはハイファッションとも融合し、中にはコンテンポラリーアートの空気を感じられると考える人もいる。
彼の写真は、まさにそのシーンを代表しているだろう。したいことをした結果、彼は時代の最前線に飛び出したのである。
キッズに贈るメッセージ
こうしてレイはセレブが割拠するストリートシーンを、たった１年でのし上がることとなった。何もなかったキッズからセレブの仲間入りを果たした彼は、今追いかけられる立場に立った。レイは未来を担う子供らに、あるメッセージを発信し続けている。
“dreams are thoughts that can always become reality
so don’t ever think ur not destined
4 ur dreams
because no thought is ever 2 far 2 obtainit’s all comes down 2 how dedicated u are 2 chasing that dream”
「夢は想っていれば叶うんだ。諦めたら叶わない。先天的な物じゃなくて、どれだけ身を捧げたかが大切なんだ。」（Twitterより）
今、NBA選手やヒップホップスターといった、アメリカンストリートカルチャーのトップに立てば誰もが羨む生活が待っている。せめてその周辺に従事できればと思うキッズは星の数ほどいるだろう。レイの言葉は彼らの心を突き動かしているはずだ。
自身の素性や、写真への哲学を言葉にしないレイが、わざわざ文字に起こして伝えるメッセージ。それは唯一写真では伝えられないことなのかもしれない。
逆を言えば、「夢を諦めて欲しくない」というメッセージ以外は、彼の写真に込められていると私は思っている。最後に数枚、私の好きな彼の写真をご紹介しておしまいにしたい。
